シン・ウルトラマン感想&考察「暴力と政治と外交と」(ネタバレ注意)



大まかな感想(ネタバレなし)

 正直見る前は不安だったけど、最高だったわねウルトラマン

そりゃ途中「?」ってなることもある(物理学関係は家に帰ってようやく理解したわ)けど、それを吹き飛ばすほどのパワーがあったわ!

 暴れる怪獣、謀略する外星人、揺れる官邸、そんななかでも必死に闘い続ける禍特、そして全てを背負い現れるウルトラマン

 彼らの活躍に対する感想を、それぞれの立ち位置に分けて語っていくわね👍

 

こっからはネタバレ注意

 

禍威獣特設対策室 通称「禍特対」 

怪獣以外の敵が多すぎる始末屋

 禍威獣対策のために各分野のエリートが集められた部隊ね。本家「ウルトラマン」では科学特捜隊、通称科特隊と呼ばれていたわ。

 防衛隊として異色な点としては、禍特対自体は武力を持たず、自衛隊の軍師的な立ち位置であること、そして、科学者、生物学者だけでなく、公安出身者が含まれていることが挙げられるわね。

 いくらなんでも門外漢の公安2人は多すぎるし、実際現地で作戦行動をする際には神永君は逃げ遅れた児童の保護をする位暇な存在だわ(もしやることがあるなら自衛隊員に任せたはずよ)。

 ここから考えられることは、公安達は外国の諜報機関から禍特対を守る盾であり、同時に禍特対を監視する獅子身中の虫でもあるということ。ヒューマノイド型の巨人が現れた瞬間に公安から増援が来たのも頷けるわね。

 既に怪獣を何体も討伐した頼れる専門家である彼らだけれど、外星人には全く歯が立たない。特に科学の専門である滝君は余りの技術差に一時は心が折れてしまう。でも彼らの活躍がなければゼットンを倒すことはできなかったし、神永君が帰ってくることもなかったわ。特に世界中の技術者を集めゼットンを倒す シーンは「群れ」である人間独自の力を見せつけた形になるわね。

宗像 龍彦

華々しくない面を全部やってくれるいい人

 禍特対の室長にして政治担当。公安達が外国対応なら、室長は日本政府への対応を担当していたと言えるわね。ミサイルの戦費を防衛省に回したりするなどの面倒毎を一手に引き受け、禍特対を守る室長の鑑よ。こういう人がいると作品のリアリティにも繋がるし、政争を上で全部済ませてくれるのは作品的にも便利じゃないのかしら。

日本の政治家

活躍に恵まれなかった戦士達

 完全に外星人に振り回される格好となった彼ら。

 劇中ではカッコイイシーンがまるで無い禍特対頼りの存在だけど、そもそも怪獣たちが跋扈する魔境と化した日本を必死で支え続けた縁の下の力持ちでもあるわ。

 外星人に既存の兵器が効かないと明らかになった絶望を考えると、メフィラス星人の口車に乗ってしまったことを責めることは出来ないわね。

 というか、戦力が違いすぎて外交の余地がないわ。彼らが無能だったというより、既に政治で解決出来る問題を遥かに超えていたとしか言いようがないのよ。

一般ピープル

何この......何?

 正直作中で唯一(描写が)好きになれなかった存在ね。

「どんな危険状況でもスマホを手放さず、動画アップロードによる自己顕示欲に満ちた愚かな生物」

 というのは現代人を描写する流行の手段の1つではあるけど、そこまで露悪的に描く必要ある?と思わざるを得ないわ。

人間の無力さは政治面で散々に描写されてるし、正直蛇足感があるわね。

ウルトラマン(リピア)

柔軟で優しい頑固者

 神永の自己犠牲に興味を持った光の星の戦士。興味本位で禁忌の一体化を行うあたり柔軟性があるのかと思いきや、ゾーフィの「神永君もわかってくれるから光の星へ帰れ」という説得に首を縦に振らない頑固さも持つわ。

 というより、元々思い立ったら一直線の男?なんでしょうね。

 得意技はスペシウム光線と八つ裂き光輪。格闘戦は案外使わなかったわね。体躯がヒョロいからかしら。

 自分一人で地球人を外敵全てから守り続けるという彼の願いは無謀ですらあり、また光の星の法からいっても許されない行為だったわ。

彼の願いは地球人の技術発展という形で成されるのか、それとも他のウルトラ戦士が彼の後を継ぐのか......次回作に期待ね。

ザラブ星人

身の程知らずの奇策士

  ザラブ星人はニセウルトラマン戦略で勝利を狙ったけど......どうなのかしらね。

 地球の増援があったところで勝てるとは思えないわ。だってそもそも現代兵器が効かないんじゃどうしようもないじゃない。

 でも一時とはいえウルトラマンを拘束、無力化したのは事実。スピード感ある官邸掌握も相まって、地球掌握への道はそう遠くなかったとも言えるわね。

メフィラス星人

自然保護団体VSペットショップ

 相手に有利な餌を与え交渉を有利に進める智謀と、時間制限があるとはいえウルトラマンに対抗できるだけの実力を兼ね備えた強敵だったわね。

 彼の人類への愛は、人間が軍馬を見るような目線を感じるわ。愛嬌があり、有用性も高いペット。きっとメフィラス星人の管理下で「飼育」されるというのも人類にとって悪くない結末だったと思うのよ。

 でもウルトラマンにはそれが許せなかった。基礎理論を渡すだけでも苦肉の策だった彼にとって、理論も分からないものをホイと渡すメフィラス星人は、地球人への愛し方に「解釈違い」が生じたとも言えるわね。

 魚を渡すよりも、釣りの仕方を教えるべき。この言葉を思い出さされるエピソードだったわ。

光の星

超法的な裁定者

 「自然生物以外使用禁止」という条約がある中、平然とゼットンを使用する危ない国家よ。技術力もとんでもなく、主力兵器であるベータカプセルの小型化について、他外星人は彼らの足元にも及ばないわ。

  正義の押しつけの危うさを象徴するような彼らではあるけど、ウルトラマンを派遣してくれたことから分かる通り、平和を求める心については本物よ。

 「地球が弱いままでは無数の外星人から守りきれないし、まさか新技術を渡す訳にもいかない」

  彼らもこんな悩みを抱えていたのかもしれないわね。リピアの落とし所(基礎理論は渡すけど実際に開発するのは地球人)というのは、彼らがギリギリ許せる範囲だったのではと思うわ。

ゼットン

現代に現れた星間戦争の悪夢

 生体兵器以外禁じられた現代宇宙において、大気圏外から1超度の熱を放射するゼットンはまさに規格外の存在よ。例えるなら、西部劇にイージス艦が現れるようなものね。

  こんなものをホイホイ使えるということは、光の星にはゼットンを破壊しうる火力もあると見て間違いないわ。その軍事力あればこそ光の星は宇宙の裁定者足りると言えるわね。

  ただ、ゼットンが神風戦術で突破できることはマルチバース中に広まるでしょうね。外星人は「群れ」の概念に乏しいとはいえ、ゼットン破壊の手段が生まれるのは大きなディスアドバンテージだわ。

 

……こんなところかしら。まあようは全員カッコよかったし頑張ってるのが伝わって最高だった、ということよ!